中日国交正常化30周年をお祝いし、日本の皆様に内モンゴルの民族文化、特にモンゴル民族独自の馬頭琴音楽芸術をご紹介申し上げます。 我々は、美しい歌声と誠実な心を捧げ持って日本へ参りました。今回の文化交流を通じて中日両国人民の心と心が更に近づき、友誼を深め、世界の平和と繁栄の擁護のために貢献できますことを念願いたします。 (パンフレットより)
大草原 チ・ボラグ作曲/合奏 曲はゆったりした前奏にはじまる。デリケートな装飾音を含む独奏、斉奏の美しさをたっぷりと聴かせた後、アップテンポな後半に入る。また、ピアノと馬頭琴の音色の対比を楽しめるのも、この曲の魅力だ。チ・ボラグが手塩にかけて育てた野馬(イエ・マ)の表現能力を知ることができる一曲。 モンゴル舞曲(日本初演) チ・ボラグ作曲/合奏 モンゴルに伝わる踊りの音楽をもとに、約20年前にチ・ボラグが創作した作品。激しい踊りの動きが、馬頭琴の見事なアンサンブルで再現される。モンゴルでは、特に古い時代に集団舞踊が盛んであり、古い記録でもその様子を垣間見ることができる。モンゴル人にとって踊りとは、単に楽しむだけでなく、団結心を高め、それを確認するという意味合いがあった。 ゴンゲレン河(日本初演) チ・ボラグ作曲/合奏 チ・ボラグが今年の夏、大草原を旅した際に訪れたゴルゲルン河の美しさに感銘を受け、作曲した曲。チ・ボラグはさまざまな河にまつわる曲を演奏し、また作曲している。さらに、自伝「馬頭琴と私」にも故郷の河とその変貌について書き及んでいる。大草原をうるおす河に自然のすばらしさ、美しさを見出し、水の流れる様子に人と民族の運命を重ね合わせる。チ・ボラグにとって、草原を流れる河はとりわけインスピレーションを喚起する存在であるらしい。 モンゴルの歌から チェチェグマー独唱 モンゴルの歌は、そのメロディの様式から2つのジャンルに分けられる。音を自由に延ばして歌うオルティン・ドーとビート感があるボグン・ドーだ。ちなみに、前者は「長い歌」、後者は「短い歌」の意だ。いずれも日本人にとって、親しみの持てる節回し。「はじめて聴くのに懐かしい」モンゴルのメロディを堪能していただきたい。 草原は北京へと連なる チ・ボラグ作曲/合奏 文化大革命中に迫害を受けたチ・ボラグが獄中で書いた作品。明日の命も知れない境遇で創作された曲だが、メロディはあくまでも澄みわたり未来への希望に満ちあふれているようだ。後に、この作品は放送やステージでもひんぱんに取り上げられ、作曲者自身と野馬(イエ・マ)の代表的なレパートリーにもなった。チ・ボラグは「どんな環境にあっても、心を込めて質の高い作品を作る。そうすれば、かならずや多くの人々に受け入れられ、永遠に愛される曲となる。それが芸術家としての勝利だ」と語っている。 奔騰の野馬(日本初演) チ・ボラグ作曲 チ・ボラグが野馬(イエ・マ)のために書き下ろした作品。「野生の馬のように、個性の強い存在であれ。しかし、団結も忘れるな。仲間とともに未来に向かってたくましく駆けぬけていけ」という、チ・ボラグの「馬頭琴アンサンブル・野馬(イエ・マ)」、ひいては若い世代全体に対するメッセージが込められている。 遥かなるケレルン河 モンゴル国楽曲/チ・ボラグ独奏 モンゴル国東部を流れるケレルン河は、同国を代表する河川のひとつ。この河のほとりで育った人間の、故郷をなつかしむ歌を馬頭琴で演奏する。なお、ケレルン河は、モンゴルの古事記とも言われる「元朝秘史」にも登場する、歴史的にも有名な河のひとつ。 運命 チ・ボラグ作曲/馬頭琴四重奏 1979年、チ・ボラグは十数年ぶりに故郷、ホルチンを訪れた。しかし、大躍進時代などの無理な開発などもたたり、故郷の自然は大きく傷つけられていた。そして、幼なじみも生活の苦労がたたり、老人のようになっていた。なにごとも、変化をまぬがれるものはない。チ・ボラグは幼少時に活仏として寺院でも生活を経験しているが、仏教思想の薫陶を受けたことも、彼の藝術に大きな影響を与えているようだ。 荒城の月 滝廉太郎作曲/馬頭琴四重奏 チ・ボラグが積極的に演奏したことにより、この曲は馬頭琴のレパートリーとしても定着した。四重奏用の編曲では転調がおこなわれ、高い音域へ移ることによる音色の変化も味わうことができる。なお、明治34年に発表されたこの曲は、大正時代にはわずかに変形された形で歌われるようになった。最近では原曲のとおり演奏されることが増えてきたが、野馬(イエ・マ)は一般的に日本人に親しまれているメロディで演奏している。 昇る太陽 チ・ボラグ作曲/合奏 まず、ピアノによるゆったりとした導入に馬頭琴の激しい合奏が続く。弦を分割振動させるハーモニクス奏法も効果的に使われている。音量の対比と弓使いのバラエティが聴く人を飽きさせない。中間部は一転して、オルティン・ドーからゆったりとした3拍子に変化。節回しの美しさが特長だ。その後、冒頭の部分が再現されて曲を結ぶ。西洋音楽的な形式感と、モンゴル的な躍動感、情感が巧みに結びつけられた一曲。 求道(日本初演) チ・ボラグ作曲/合奏 人はみな、みずからの理想とするものを追い求める。また、それでこそ真実の人と言える。挑戦を恐れてはならない。いつも新しい道を探し、どんなに困難でも必ず自分自身の道を探しださねばならない。そんな思いが込められた曲。作曲者の真情の吐露とも言える作品だ。 万馬のとどろき チ・ボラグ作曲/合奏 馬頭琴の古典的なテクニック、新しいテクニックが大胆に盛り込まれた作品。力強く未来を目指して奮闘する、モンゴル民族の姿を託して書かれた。この作品はピアノ、民族楽器、オーケストラなど、さまざまな伴奏形式による独奏用、馬頭琴アンサンブルによる合奏用など、さまざまな形に編曲されている。この曲は1979年の10月1日、中国建国30周年を記念して中央テレビ局が主催した藝術コンクールの作曲部門で第2位、演奏部門で第1位に入賞した。 泉の水(日本初演) チ・ボラグ作曲/チェチェグマー独唱 ブリヤート民謡の特徴を取り入れた作品。ブリヤートはバイカル湖周辺のロシア領内、モンゴル国、内モンゴル自治区北部に住む、モンゴル民族の一派。その民謡は、親しみやすく短いフレーズを重ねていくという特徴がある。なお、チ・ボラグの「ボラグ」はモンゴル語で泉の意。「藝術が泉のように湧き出るように」との願いを込めてとの命名とのこと。 四季 伝統曲/合奏 内モンゴルには1940年代まで地方宮廷が存在した。そこで歌われていた、宮廷歌曲のひとつ。内モンゴル自治区成立後も長年にわたって活躍した大歌手、ハージャブなどが、そのメロディを伝えた。ここでは、馬頭琴アンサンブル用に編曲、冒頭部には伝統的は合唱である「チョーリン・ドー」の手法も取り入れられている。 心の詩(うた) チ・ボラグ作曲/チ・ボラグ独奏 愛する人を想う気持ちを音楽化した作品。ゆったりした曲調がしだいに盛り上がる。馬頭琴にとって難しい転調部分も盛り込まれている。派手さはないが、音楽的にも技術的にもこの曲を演奏するには高いレベルが要求される。 スーホの白い馬 チ・ボラグ作曲/合奏 日本でも有名な馬頭琴の誕生伝説、「スーホの白い馬」をイメージして創作された曲。広漠とした草原の様子、人馬一体となって駆け抜けていく様子が描写されている。弦をはじくピチカート奏法も効果的に使われている。子どもたちにも人気のある一曲。 富士夢想(日本初演) チ・ボラグ作曲/チ・ボラグ独奏 内モンゴルに戻っても、日本のことを忘れる日は一日たりとてもない。そこには、親族、友人・知人、そして馬頭琴を愛してくれる人たちが暮らしているからだ。そして、雄大で美しい富士山は日本のシンボルだ。富士の姿を想い描いて書かれたこの曲には、作者の日本に対する想いが込められている。 セレンゲ河 モンゴル国楽曲/馬頭琴五重奏 モンゴル国北部にあるホブスゴル湖を源とするセレンゲ河は、国境の町スフバートル付近でオルホン河と合流、シベリアに入り、バイカル湖に流れ込む。ケレルン河などと同様、モンゴルの古事記と呼ばれる「元朝秘史」にも登場する河。そして、そこに残されているのはけがれを知らぬ大自然だ。この曲にはモンゴル国独特の装飾音なども盛り込まれ、遥かなるセレンゲ河に対する想いをつづっていく。 回想曲 チ・ボラグ作曲/合奏 苦しいことも多かった。うれしいこともあった。出会いも別れもあった。幼い時からのことを思い出しつつ書かれた曲。オルティン・ドー風の序奏に続き、メインのメロディが演奏される。切々とした感情を歌いあげながら、過度にセンチメンタルにならないのは、チ・ボラグの作曲上の特徴でもある。この曲では、そういった配慮の行きとどいた筆づかいが、次のアップテンポな部分への移行に見事に生かされている。 蒼き狼の伝説 チ・ボラグ作曲 オルドス高原 チ・ボラグ作曲 君に贈る一輪のバラ(新疆民謡)