大草原で遊牧生活を営むモンゴル人。彼らがこよなく愛する楽器が馬頭琴だ。楽器の名称は棹の先端に施された馬の頭の彫刻による。ただし馬頭琴は日本語や中国語での名称、モンゴル語ではモリン・ホール(=馬の楽器)などと呼ばれている。演奏家チ・ボラグは1944年、内モンゴルの生まれ。若い頃から頭角をあらわし、演奏、作曲、教育、楽器改良、民族音楽研究などいずれの分野でも第一人者となった。モンゴル民族はブリヤートを中心とするロシア領、ウランバートルを首都とするモンゴル国、内モンゴルを中心とする中国領などで生活しているが、チ・ボラグはどの地域のモンゴル人からも超一流の芸術家として尊敬される貴重な存在である。共演するチ・ブルグッドはチ・ボラグの長男、幼少より父の薫陶を受けた若手有望株の演奏者だ。歌手のオドバルは内モンゴル民族劇団歌劇部でソリストをつとめた実力者。情感あふれる歌唱には定評がある。 なお、1998年5月から8月にかけて小学生文化新聞に連載された「大草原と白馬」(原作:山本伸一)にもとづくチ・ボラグの作品も発表される予定。原作をつらぬく幻想的な雰囲気や理想に燃える少年の心がモンゴル人によってどのように音楽化されるのか。大いに期待が寄せられている。 「民族音楽研究家 鈴木 秀明」
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『大草原と白馬』、期待の音楽化モンゴルが生んだ馬頭琴の世界的名手チ・ボラグは、今回の日本公演で、民音創立者である池田大作先生の童話『大草原と白馬』を題材にした創作曲を披露してくれる。この原作は、1998年5月から8月にかけて小学生文化新聞に掲載されたもので、一人の少年が白馬の助けを借りて、モンゴルの大草原に繰り広げられようとする部族間の戦争を止めるために戦う物語である。「ぼくは君の『心』なんだよ。君の『希望』が、ぼくの前あし。君の『勇気』が、ぼくの後ろあし。君の『願い』がぼくの翼なんだ。あきらめないで、二つの村を助けよう!だれかの幸せを願える人は、心に翼があるんだ!」 この白馬が少年に語る言葉は、そのまま原作者が世界の少年少女に贈る言葉であろう。モンゴルに生まれたチ・ボラグは、格好の題材を見つけたといえる。壮大なドラマと共に、希望、勇気、そして人々の幸福を願う少年の熱い心が、どのように馬頭琴によって“語られる”のか。期待は膨らむばかりである。 |